Fedora 30 (Thirty)リリースノート

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レッドハット社(Red Hat)が支援するコミュニティー The Fedora Projectは、
5月7日 Fedora の最新版 Fedora 30 (Thirty)をリリースしました。 Fedora は、約半年周期(Fedora29 は 昨年の 10月30日リリース)でリリースされるディストリビューションです。 Fedoraは最新の技術、ソフトウェアのバージョンを積極的に取り込む事で知られ、ここで検証された技術は Red Hat Enterprise Linux(RHEL) や RHELクローンの CentOS に取り込まれます。

Fedora には、大きく分けてディスクトップ向けの Workstation とサーバ向けの Server エディションが存在し、インストール用のISOが配布されています。
Workstation は Ubuntu 19.04 同様、最新の GNOME Shell 3.32 が採用されています。GNOME 3.32 の新機能については、Ubuntu 19.04 の特集コーナーを参照して下さい。GNOME Shell の使い勝手が悪い人には、KDE Plasma、XFCE、LXQT などの 代替ディスクトップ環境がFedora SPINS(https://spins.fedoraproject.org/ja/)で Fedora Labs(https://labs.fedoraproject.org/) では、ゲームやデザイン用途に合わせてカスタマイズされたISOが提供されています。 また、Atomic(https://getfedora.org/ja/atomic/download/) では、Amazon EC2 へのリンク、VirtualBox、libvirt/KVM などの仮想マシン上で稼働することを
想定したディスクイメージが配布されており、アーキテクチャーは、x86_64、ARM-hfp、ARM AArch64、をサポートしています。

Fedora 30 のアップデート内容は以下の通りです。
https://fedoraproject.org/wiki/Releases/30/ChangeSet

・Bash が 5.0 へアップデート ※
・ブートローダの仕様(BLS)通りブートローダのメニューエントリが生成可能に (grub.cfg の変更)
・システム、セッションメッセージバスのバックエンドとしてdbus-brokerを採用
・Python の 依存ジェネレーター Python Egg/Wheel が有効に
・Boost が 1.69 へアップデート
・Flicker Free Boot 採用により Workstation 起動時の一時的なブラックアウト、トランジションが無くなった
・FreeIPA Python 2を廃止
・libcryptから非推奨とアンセキュアな関数を削除
・GCC が 9 へアップデート ※
・glibc 2.29 へアップデート ※
・GNOME 3.32 へアップデート ※
・GnuPG 2 が GPG(/usr/bin/gpg) のデフォルトになりました。 ※
・Mass Python 2 パッケージを廃止
・rpm の Group: タグを全て削除
・glibc-minimal-langpack が Buildsystem グループに追加され glibc-all-langpacks が buildroot から除外
・システム全体のLDFLAGSに –as-neededフラグを追加することによって余分なリンクを削除
・rpm の Obsolete スクリプトを削除
・Comps の Language グループを Langpacks へ変更
・リモートログイン時、ロケール転送された設定値が利用出来ない場合、C.UTF-8 が使用される
・Ruby が 2.6 へアップデート ※
・cryptsetup のデフォルトのメタデータフォーマットをLUKS2へ切り替え
・dnfリポジトリのメタデータを xz,gzip から Zchunkへ変更 ※
・Golang が 1.12 へアップデート ※
・/etc/sysconfig/nfs を廃止
・ARMv7 のデフォルト起動をuEFIに変更 (uEFI のサポートは29から) ※

Fedora 30 が採用する主なソフトウェアのバージョン

カーネル
kernel 5.0.11

Cライブラリ
glibc 2.28
libgcc 9.0.1

ディスクトップ環境
wayland 1.17.0
gnome-shell 3.32.1
KDE Plasma 5.15.4
libreoffice 6.2.3.2
gtk 3.24.8
qt 4.8.7

プログラミング言語
perl 5.28.1
Python 3.7.3
php 7.3.4
ruby 2.6.2
rubygem-rails 5.2.2
nodejs 10.15.3
golang 1.12.2

データベース
postgresql 11.2
mariadb 10.3.12

Webサーバ
httpd 2.4.39
nginx 1.16.0

ネットワークサーバ
samba 4.10.2
bind 9.11.6
dovecot 2.3.4
postfix 3.4.4

変更一覧を見ると一般ユーザが気づくような大きな見た目の変更や新機能の追加はありません。パッケージのバージョン変更で大きな変更があったのが Kernel が 5.0、Bash 5.0、GGG 9.0、Ruby 2.6 といったとこでしょうか。

※ リーナスは「4.x で続けてきたナンバリングが,手と足の指の数(20)を超えたから 5.0 にしただけ」と述べています。

Bash 5.0 では、新しい変数が追加され UNILX 時間も Bash から分かるようになりました。($BASH_ARGV1, BASH_ARGV2 などは無い)

$echo $EPOCHSECONDS
1557620184
$ echo $EPOCHREALTIME
1557620191.587948
$ echo $BASH_ARGV0
-bash

Ruby 2.6 では、JIT (Just-in-time) コンパイラが導入され Ruby 2.5 の約1.7倍の性能向上があったようなのでRuby エンジニアは性能比較しても面白いかもしれません。

私が面白いと思った新機能としては、dnfリポジトリのメタデータが xz,gzip から Zchunkへ変更されたことだ。Zchunkは、ファイルを複数のチャンクに分割し、チャンクごとに圧縮する圧縮フォーマットです。ファイルに変更が加わった場合、変更された部分のチャンクのみを差分として利用すればよいため、dnf update で リポジトリのメタデータを取得データが少なるなるのでスピードが早まります。

Fedora でも、ARM CPU シェアの広がりによってサポートも強化されてきました。人気の Raspberry Pi はももちろん、いろいろなARMデバイスをサポートしています。ARM版はインストール付き ISO も用意されていますが、Raspberry Pi をセットアップする時は、イメージをSDカードに書き込む方法が一般的でしょう。

Arm版のイメージは https://arm.fedoraproject.org/ja/ よりダウンロードしますが、 公開されている全てのイメージのリンクが紹介ページにはないので、
https://download.fedoraproject.org/pub/fedora/linux/releases/30/
もしくは、
https://dl.fedoraproject.org/pub/fedora-secondary/releases/30/
より、対象となるイメージをダウンロードして使用して下さい。

SD カードへの書き込みは、Fedora で提供されている arm-image-installer コマンドを使用します。

$ sudo dnf install -y arm-image-installer

私は手持ちの「Raspberry Pi3 Model B+」で起動するために Mate 版のイメージをダウンロードして target を rpi3 としました。Pi2 は rpi2 と指定します。
その他の ARM デバイス用SDを作成する場合は、/usr/share/arm-image-installer/boards.d/ 配下のファイル名を –target= のパラメータに使用します。
arm-image-installer コマンドは、SDカードをアンマウントしてから実行します。

$ sudo umount /run/media/username/*
$ sudo arm-image-installer --image=Fedora-Mate-armhfp-30-20190427.n.0-sda.raw.xz --target=rpi3 --media=/dev/XXX

※ Ubuntu には、arm-image-installer コマンドがありません。
※ Server版の aarch64 は、Pi3 B+ で起動させることが出来ましたが、Workstation 版の aarch64 は、GNOME Shell 版しか提供されておらず、起動はしましたが GUIは起動してきませんでした。

Fedora を起動すると、Server も Workstation 版もセットアップウィザードが起動し、タイムゾーン、root のパスワード、ユーザ作成、ネットワーク設定を行います。

CentOS 7 と時を同じくして RHEL 7 リリースより約5年、 RHEL8 もリリースされました。この5年間 Fedora では新しい取り組みが沢山なされてきました。
Fedora 29 -> 30 の変更点はあまり大きくありませんでしたが、5年経過すればかなりの違いが出てきます。Fedora では、数年まえから実装されテストされてきた yum -> dnf への変更や Modularity の実装など、ようやく多くのエンジニアが利用を開始することでしょう。Fedora 30 の機能が今後どれくらい RHEL に取り込まれるか分かりませんが、Fedora を触れることにより、Linux がどう進化していくのか体験することができます。

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